空母いぶき

先輩の勧めで『空母いぶき』という映画を観ました。フィクションではありますが、リアルな日本の実情が理解でき、おもしろく観ることができました。映画では架空の敵国設定でしたが、原作の漫画では中国が敵国だったので一層のリアル感がありました。

 

漫画『空母いぶき』での物語は尖閣諸島に三人の中国人が避難上陸するところから始まります。自衛隊が身柄の確保をしようとしたが応じず、中国国旗を掲げたため、強引に身柄を確保します。中国より救助目的に空母遼寧が発進、遼寧から戦闘機を発進させ、日本の巡視船に威嚇射撃をしてきます。日本は三人の身柄引き渡しを打診し、中国へ引き渡します。米国は積極的な介入はせずとの方針で、中国政府もそれを確認。威嚇射撃に屈した幕引きは、日本の負け戦と言われ、この問題を機に「ペガソス計画」が急ピッチで進み、「空母いぶき」が就役します。日本と中国の両政府はそれぞれの根拠を掲げて尖閣諸島の領有権を主張、日本側が「国連に提訴する」と言っても、中国側は動じる気配もありません。またアメリカは、中国を相手に事を構えるのを良しとせず、静観。日本に残された選択肢は、自己防衛能力を強化すること。その具体策が、「空母いぶき」でした。中国軍の侵略に対し、いぶきを中心とした陸・海・空の自衛隊が戦います…。

 

この姿を見ると、日本を守るために空母は必要だという意見にも納得できるし、その一方で空母を作ったことで中国を刺激しているという意見にも耳を傾けたくなります。空母は本当に必要なのか、考えながら読み進めると、この作品を最も楽しめるように思います。

 

漫画『空母いぶき』は、かわぐちかいじ作、恵谷修監修で、『ビッグコミック』(小学館)にて2014年24号から2019年24号まで連載されました。本作の魅力のひとつとして、リアリティの高さが挙げられています。2016年に雑誌『正論』で、衆議院議員の小野寺五典、元海将伊藤俊幸、軍事ジャーナリストの潮匡人が、この作品をテーマに対談を行いました。小野寺氏が初めて防衛大臣を務めたのは、2012年から2014年のこと。当時も中国による威嚇行為や侵犯行為が頻繁にありました。そんな時期も相まって「あまりにリアルで驚いた」「私たちが経験した緊張感を共有している」と述べています。また、伊藤氏も「現場をよく知っている」と作者に感心していて、特に船内での会話などは「自衛隊に協力者がいるのでは」と感じたそうです。中には現実ではあり得ない展開もありますが、「安全保障環境の厳しさや防衛問題を知るきっかけとして、多くの人に読んでもらいたい」と、プロのお墨付きを得ている作品です。

 

「戦争をしてはいけない」というのはその通りです。しかしそれだけでは何も問題は解決しません。今、考えなければならないのは「戦争をしない」ためには具体的にどうすればよいのか、ということです。日本が戦力=軍隊を持たないことが「戦争をしない」ことになるのでしょうか。日本が戦争を放棄しても、戦争は決して日本を放棄しないのです。日本という国が「抵抗しない」のであれば、戦争にならないかもしれませんが、結果それで済むはずがありません。それが「平和」であるはずもなく、むしろ「奴隷の平和」であり、相手の国の「言いなりになるしかない平和」です。「抵抗する」は国際法の言葉で言えば「自衛権を行使する」この自衛権は世界のどの国にも認められています。「戦争をしない」ためには、日本は戦争をしないというだけではなく、相手の国に「戦争をさせない」ことが重要です。つまり、相手の国が日本に戦争を仕掛けようとしても、それを思い留まらせるだけの「力」を持つことが必要です。「戦争をしない」ためには、いざとなれば「抵抗できる」だけの「力」、「戦争をさせない」ための「力」が必要です。

 

これまで戦死者が出なかったのは、他国から日本への侵略行為がなかったからです。日米安保と自衛隊の活動とが相まって抑止力が働いた結果、平和が維持されました。決して憲法九条という条文があったから戦死者が出なかったのではありません。一方、自衛隊が軍隊になれば「自衛隊員の戦死する危険性」が出ると言われますが、そもそも国民の安全や社会の秩序を守る仕事には、自衛隊に限らず、警察官や消防士であっても常に危険が伴います。

 

戦争への覚悟を持つ、戦争を阻止する覚悟。自国は自国で守る。日本の国防は否応なく新たな時代に入っています。何が正しく、何が正しくないのか、そのために何をすべきなのか。どんなに言い訳をしても、どんなに誰かのせいにしても、結局いつかは自分でやるしかありません。自分と向き合うことでしか、未来は開けません。どんなにごまかそうとしても、上手くいかない悩みは、「考えて動いてみる」ことでしか、問題は解決しないのです。依存するとは自由を失うことです。厳しい環境が考える力を与えてくれます。自分と向き合うことで初めてあり方は強くなる。自己肯定感という言葉が最近流行っています。自尊心、自己評価という言葉も類義語です。困難に対しての向き合い方が自己肯定感の高低を決めます。「今の自分を好きになろう」「自分をもっと認めよう」それができれば最初から問題は起こらないはずです。今回『空母いぶき』を通して、自分なりに国家感を考える機会となりました。自分の国、すなわち日本のことは自分のこと。私たち、ひとり一人が考えるべきことであるとの結論に至りました。

 

参考文献  かわぐちかいじ作、恵谷修監修『空母いぶき』小学館,2015年

2021/08/01