運を引き寄せる Vol.4

私の人生で一番大きな試練は、私自身の「慢心・油断・自信過剰」から起こったように思います。当時の経営方針は「牛乳宅配事業拡大&業態変換」。まさに業界を背負っているかのごとき感覚でした。牛乳宅配事業は、営業・店舗運営・財務などの部署にそれぞれ管理職が揃っていて、順調に売上や店舗数を拡大していました。周りから見ると順風満帆に映っていたと思います。しかし、実情は売上や店舗の数だけに重きを置く経営で、肝心な利益には無頓着、利益が出ているのか出ていないのか、全く分かっていませんでした。言うなれば目隠しをして全速力で走っているようなものでした。業態変換は、「食医食」と称し、東京より管理栄養士を招き、身体に優しい食材を使用し、カロリーをカットした調理方法など「食べることで健康になる」をコンセプトに掲げ、オープンキッチン型料理教室や健康弁当を製造する弁当工場を作りました。このビジネスモデルを既存宅配店舗近くに店舗展開してマッチングを試みようと考えました。そして、そのために多くが管理栄養士などの資格を持つ新卒社員を50人以上採用しました。しかし、思い通りには事は運ばず、料理教室には生徒は来ず、弁当の販売もコスト高により、売れば売るほど赤字という有様でした。無駄な経費だけが増え、売上が増えず、新卒たちは行き場を失い、急ブレーキ、急降下の経営状態でした。

 
3年ほどは地獄のような日々が続きましたが、今思うと、この試練が後に大きく飛躍するために必要な宝の山だったように思います。V字回復するために、事業計画を作成、月次で経営状況を確認し、売上・店舗数拡大より利益重視、徹底的に無駄を省きました。この時の「ドン底での教え」が運を大きく引き寄せ、その後の人生を大きく飛躍させたように思います。その教えとは「感謝する心」「目標達成する強い心」が大事だということでした。ドン底で、自分だけでは何一つ達成できないことを知り、家内、子ども達、両親、ご先祖様、社員、取引先、友人にいつも感謝の気持ちを持つようになりました。毎晩寝る前には、感謝の気持ちと人生の目標を唱える、年に数回家族と共に墓参りに行きご先祖に感謝を伝える、そんな習慣が新たに始まりました。

 
人間の運というのは、どういう心がけを持ち、どういう行動を示すかによって変わってきます。周囲とどういう関係性を築き、周囲をどう巻き込み共鳴していくのか、それが家族や組織の機運となり、その人の運になるのではないでしょうか。実力以上に人間性や生き方が大切であり、それが周囲の評価や本人の運につながっていくと言っていいでしょう。経営の神様と言われた松下幸之助さんや本田宗一郎さんはなぜ多くの人に愛されているのか。会社を一から興し、日本を代表する世界的企業に育てました。でもそれだけではないように思えます。仕事に取り組む真摯な姿勢、社員や取引先、ひいては国民までにも尊敬される人格を備えていたからだと思います。人間の存在価値は周囲の評価で決まります。組織において個人の力だけでは、結果は出ないことがたくさんあります。真面目に一生懸命頑張っていれば、必ず誰かが見てくれている。いつもそう思わされることの連続でした。成功するためには、努力し実力がなければ辿り着けませんが、そのチャンスを与えてくれた人がいたからこそ成功することができる、そのように思います。

 

 

2017/11/01