Column / 社長コラム 社長コラム

2018.09.01

ワールドカップ

サッカー界はワールドカップ開催前にハリルホジッチ監督解任という大きな決断をしました。解任については広告代理店やスポンサーの圧力や一部選手の造反など数々の噂が飛び交っていますが、この状況下で選出されたのが西野朗新監督でした。ハリル監督は自分の戦術・戦略を日本サッカーに植え付けたいと明確なものがあり、トップダウンで指示を出していました。西野監督はハリル監督のやり方でうまくいかなかったこともあり「みんなで話し合い、意見をぶつけ合い、自分たちで作り上げろ」というボトムアップ方式を採用しました。その後、選手たちの「思い・考え方」などを分析して戦略や起用法を練ったのだと考えられます。その結果、長谷部主将や大半の主力選手たちの口々から「チームの雰囲気が変わった」と。そこで抑圧されていた部分が解き放たれ、非常にコミュニケーションも増えて、チーム一丸となった印象があります。

グループステージでの対戦相手のFIFAランキングはポーランド8位、コロンビア16位、セネガル27位、日本は61位、グループ内でダントツの最下位。決勝トーナメント進出は絶望的だと言われていました。初戦の相手は、前回大会で惨敗を喫したコロンビア。今回は今までとは展開が違うというか、何かの力が働いたというか、とにかく力強くなったように感じました。香川がPKで先制すると、一度追いつかれるも大迫の決勝弾により2-1で勝利します。この勝利により、日本中が一丸となり日本チームに期待を寄せるようになった気がします。続くセネガル戦は引き分けに持ち込み勝ち点1を獲得。2度のビハインドを背負いながら追いつくという、今までにない粘りを魅せてくれました。ポーランド戦は初黒星を喫するも、グループ2位で決勝トーナメント進出を果たしました。

ポーランド戦での試合運びが波紋を呼びました。残り時間10分、コロンビア・セネガル戦の戦況により、日本はファール数の少なさから、このまま試合が終われば決勝トーナメント進出がみえてきました。西野監督は極めて大胆かつ恐ろしい勝負を仕掛けます。負けているのに、攻めずパスを回し、時間を稼ぎ、同点に追いつくよりも失点を防ぐことを優先しました。単体で見ると不本意の試合も、大枠で見ると違うものが見えてきます。この試合、ポーランドのクオリティーであれば、先発メンバーを使うことで勝ち点を取れたはずだが、それをしなかった。先発メンバーを6人も変えた。「疲弊していた。ギリギリの状態だった」と。ベスト16進出を得るためのなりふり構わぬ試合運び、という意見もある中、西野監督だけはベスト8という違う場所を見ていたのかも。ベスト16進出よりも、ベスト16で「勝つ」選択をしました。「ベスト8プラン」日本サッカー未開の地を見て采配を振るった西野監督に、勝負の世界に生きる勝負師の真髄、行き様に近い采配を見ました。

決勝トーナメントの相手はFIFAランキング3位のベルギー。日本は原口のゴールで先制。乾のミドルシュートにより追加点を奪い2点リードを手にした。「圧倒的不利」という大方の予想を裏切り日本史上初のベスト8進出が現実味を帯びてきました。日本中の誰しも「勝てるかも」と思った瞬間に何かが変わったように思います。緊張の糸が切れたから?勝負の波目が変わったから?前半は、ベルギーは強いとの認識の元、戦略を練っていましたが、2点先取したことにより心に隙ができたように感じます。一度緩んだ心の隙は簡単には元へ戻せませんでした。個々の強さ、うまさ、したたかさではベルギーは1枚も2枚も上でした。ベルギーの高さに対応できず同点にされると、最後はアディショナルタイムに鮮やかすぎるカウンターで決勝点を献上、掴みかけたベスト8進出はまたしても叶いませんでした。

大会前は、厳しい意見がサッカーファンにありました。選手たちはそのことをわかっていて、前回大会から2大会連続惨敗となると、日本サッカー界の衰退に及ぶ危機感を持っていました。電撃解任後のテストマッチでも結果を出せず、4年前も戦った選手からは、未来の命運も自分たちで背負って戦う覚悟が感じられました。長谷部主将は大会終了後「期待されていない雰囲気を絶対にひっくり返してやる。そういう思いは皆が持っていて、その思いが強かった分、皆さんの期待を取り戻せたことが嬉しい」「やってやったじゃないですけど、そういう気持ちはもちろんあります。逆に皆様の厳しい言葉はチームの大きな力になりました」とコメントしています。日本サッカー界の悲願であるベスト8に今までで一番近づいた大会でした。本当に惜しかった。しかし、負けは負けです。私の人生のルールでは「運はプロセスによるところが大きい」という考え方があります。それに当てはめるとポーランド戦での日本らしくないしたたかな戦い方からの、ベルギー戦でのしっぺ返し。もし、2-0でリードというシナリオを事前にシミュレーションしていたなら、結果が変わったような気がします。この2試合は未来の日本サッカー界に大きな意味があったよう思います。日本はチーム一丸となり全員で戦った時、世界の強豪とも互角に渡り合える力があると思いました。しかし、選手たちが限界を超えるぐらい走り、全員で守り、全員で攻めるサッカーをしなければ通用しません。世界との違いはメンタルとパワーだと分析します。今回のワールドカップを教訓にさらなる飛躍を期待します。夢のような時間をありがとうございました。

2018/09/01