Column / 社長コラム 社長コラム

2021.07.01

夢に日付を

(株)明治からの紹介でワタミの弁当を販売するになりました。ワタミさんとの商談の時、十年以上前にワタミ創業者の渡邉美樹氏著書『夢に日付を!』(2005年,あさ出版)を読み、生き方を変えたことを思い出しました。その頃の私は、『夢に日付を!』を参考に、真面目にコツコツと努力することが立派な経営者への道だと考え、スケジュールを日々こなす毎日を送っていました。この日は毎月発行される経営書を読み知識を高める、この時間はセミナーへ行き未来必要な経営のノウハウを学ぶ、この時間は交流会に行き人脈を増やすなど。しかし、何も変わらない、あまり大きな成果も出ない日々が続いていました。そしてある日、いやいやスケジュールをこなしている自分に気づきました。スケジュールに夢実現の期日を書き、毎日それに向かって努力をする生き方は容易ではなく、生き方を変える決心をしました。大きく変えたキーワードは「努力」から「楽しむ」でした。無理して頑張らない。努力はしない。考えて行動するのではなく感じて行動する。夢の実現に必要かどうかより、自分が楽しいかどうかを重要視する。読まなければならない本は読まず、読みたいと思える本だけを読む。セミナーや交流会には行かず出会いは天に任せる。このように選択の基準を変えることにより、大きな変化が起こり始めました。楽しく付き合える多くの経営者と出会い、やがて彼らが仲間と呼べるような存在になり、新たなビジネスが始まり、仲間が新たな仲間を連れてくるようになりました。行動範囲が広がり、仕事の世界観が広がり「仕事が遊び、遊びが仕事、人生をかけてやる遊びが仕事」。「努力」から「楽しむ」へ、選択の基準を変えることで、楽しくて仕方がない日々を実感できました。

それから十年が経ち、あれだけ楽しかった新規事業への思いも、夢を見ることはできても、ほとんど存続できず、成功には至りませんでした。事業資金が底をつくと、仲間だと思っていた者たちも、散り散りばらばらになりました。最近は仕事への思いも自分が楽しいだけではダメ、「利己」より「利他」が大事だと思うようになりました。新規事業を立ち上げる思いも、自分が楽しいと思えるかより、どれだけ社員がやりがいを持てるのか、そして、その地域の人や、その地域にどう貢献できるのかが最も重要なことなのだと気づきました。そんな在り方の変化の中、もう一度『夢に日付を!』読み返すことにしました。すると過去、渡邉氏のように努力する生き方はできないと思っていた自分が、嘘のように本の内容がすっと心に染み込みました。年齢を重ね、在り方(選択の基準)が変化したのかもしれません。この本を改めて読み、事業が上手くいかない理由が理解できました。夢を実現するために最も足りていないことは、「もっと深く夢をイメージすること」だと気づきました。現に最初に起業した牛乳宅配事業に対する思いは、未だ燃え続けています。周りを見渡すと、私が使っている机も、パソコンも、外には外に目をやると自動車や飛行機も、誰かがイメージしたものです。この世に誰もイメージしなかったものは存在しません。もう一つ、足りていなかったことは「夢を持ち続けること」「夢をあきらめないこと」だと思います。そして、そのために必要なことは「夢に本気になる」ことだと、改めて心に落とすことができました。

私の起業の動機は「金持ちになりたい」でした。今は自分のことより、社員と共に幸せになる、お客さんに喜んでもらう、などの思いが強くなってきました。社員やお客さんのことを真っ先に思えるようになったのも、元をたどれば「金持ちになりたい」という夢を持ったから起こったことです。夢も成長し変化するのですね。自分の欲で始めた事業であっても目標に向かって突き進めるならそれでよし、人生の目的は、「夢の実現よりも夢に向かうプロセスの中で人間性を高めること」なのかもしれません。人はつい、学歴・業績・お金をどれくらい持っているか、などを他人と比較してしまいます。そもそも、人は生まれた環境も、持っている才能も違うのに、「ヨーイどん」で同じ競争ができるわけはありません。一生懸命頑張っても、なかなか社会から評価を得られないこともあります。だからと言って自信をなくす必要はありません。あくまでそれは人生の途中経過です。自分の人生で大事なのは、自分の成長であって、他の人と比べることに、何の意味もありません。人生は他人との競争ではなく、あくまでも、自分自身とのレース。着実に歩いていけば夢は成長していきます。比べるのは「昨日の自分」。

2021/07/01