Column / 社長コラム 社長コラム

2022.11.01

孫子の兵法

コロナを境に牛乳宅配業界を取り巻く経営環境が大きく変化しています。私どもデミックも厳しい経営が続いているのが実情です。問題点をあげると、円安によるガソリン価格を始めとする諸経費の高騰、慢性的な人手不足、雇用条件の変化によるルールとの戦い、コロナによる緩み、などが挙げられます。今まで何度も経営危機はありましたが、過去の危機は改善手段がはっきりしていました。しかし、今回の危機は問題が複合的にあり、1つ、2つの問題点を改善するだけでは難しく、今ある全てを変えるぐらいの気概がなければ経営改善は難しいと考えています。日本や世界を代表するような経営者は何を羅針盤に経営の舵取りをいているのか?疑問に思い調べてみると、多くの経営者が「孫子の兵法」を愛読書としている方が多いことがわかりました。国や時代を超えて様々な偉人の間で読まれていて、古くは武田信玄やナポレオン、現代では孫正義やスティーブ・ジョブスを始めとする、多くの経営者が「孫子の兵法」を熟読し、孫子マニアとなっています。私自身も、この厳しい経営難をなんとか乗り越えたいという一心から「孫子の兵法」を読んでみることにしました。

「孫子の兵法」は、今から2500年前、春秋戦国時代に誕生した兵法書です。「孫子の兵法」の魅力は、ただの戦争論を述べているだけではなく、人間を心理的に深く分析し、精神や行動に対する鋭い洞察で、人間論にまで昇華させているところに魅力があります。私が感銘したポイントが3つありました。❶戦わないことを最優先 ❷奇策のススメ ❸今でも役立つ名言 順番に解説すると、❶では、戦いで重要なのは勝つことですが、孫子の「勝つこと」とは相手を完膚なきまでに打ちのめすことではなく、自軍の隊や兵士を消耗させないことを指します。戦いを最善とせず、被害や犠牲を最小限にとどめる、「戦わずして勝つ」ことの大切さを説いています。兵法書でありながら戦わないことを最優先させているところが、他の兵法書とは全く違う画期的なものとなっています。❷では、奇策とは、文字通り人の予想もしない作戦のことです。奇策といっても単なる思いつきではなく、相手を徹底的に観察・研究して、真意や行動を予測した上で行う予想外の戦略こそが奇策です。それを実行に移すためには、入念な事前準備や地の利の観察を必要とします。❸では、世界各国の戦国武将やカリスマ経営者が熟読し、そこから成功のヒントを引き出したと言われています。今に役立つ一節を幾つか紹介します。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」相手の実力も自分の実力も知り尽くしていれば、百戦しても危険に陥ることはないという意味です。出たとこ勝負の考え方は危険、希望的観測は排除して、客観的データの収集に努め、その結果を冷静分析することが肝要であると説いています。「兵は国の大事なり」孫子にでてくる最初の言葉がこの言葉です。兵とは軍事や戦いを表し、国とは国家や国民を指します。国家存亡を左右し兼ねない大きなものであるからこそ、熟慮して行動しなくてはならないと説いています。「兵は詭道なり」戦いとは敵を騙すことである。強くても弱いふりをし、策があっても無いふりをする。相手が利を求めているときは誘い出し、混乱していると見れば敵陣を襲う。相手の備えが充実していれば避ける。相手が怒っていれば、さらに心を乱し、こちらを舐めているようなら、さらに油断させる。相手が団結しているようなら、仲違いさせる。相手の無防備のところを攻撃し、不意を突く。これらは勝つための体制づくりに必要で、計画が流出しないように注意すべきだと説いています。
「孫子の兵法」を読み自分なりにコロナ後の戦い方を考えてみました。❶配達・営業・事務の役割分担ごとに費用対効果を検証し適正に正す ❷人材雇用を進めるために採用担当の必要な能力を向上させる ❸コロナ禍で緩んだ体勢を正す ❶❷❸はともに対外的に何かをしたり、特別なことをする戦略ではなく、社内にある人材の改革です。コロナ禍、約3年間の一番大きな問題は「内なる敵」だと感じています。「内なる敵」すなわち「人材の緩み」を経営改善の柱としたいと思います。2022年度は「終わりで始まりの交錯する年」終わりゆくビジネスモデルと始まるビジネスモデルが交錯する年。牛乳宅配ビジネスモデルはこのままの形では、おそらく生き残ることは難しいと考えます。どのようなビジネスモデルに変化しても生き残れるように順応出来る人材改革が必須だと思います。今を生き残れなければ未来社会貢献も地域貢献も出来ません。今、大事なことは生き残ること。
2022/11/01