あした死ぬかもよ? Vol.3 ~特攻隊~

『昭和20年、アメリカ軍はいよいよそこまで迫っていました。沖縄海域に集めた戦艦は 1500隻以上。兵力はのべ54万8000人。一方、日本軍の守備隊は8万6000人。もし沖縄が 落ちれば、本土九州は目と鼻の先。ここは、なんとしてでも死守しなければいけない。沖 縄が落ちれば、本土に乗り込まれる。そんな事態になれば、北からは、ソビエト連邦(現 ロシア)が攻め入り、朝鮮半島やドイツのように、日本も北と南に二分していた可能性も 高かったのです。そこで編み出された戦法が特攻。体当たりによる自爆です。飛行機1機 の犠牲で、相手の航空母艦や戦艦を沈められるのです。』

『特攻隊で亡くなった若者の人数は4400人にものぼります。いつか死ぬ身であるなら ば、いま最大の国難に立ち向かうことで、愛する人を守れるのではないかと、彼らは希望 を描いたのです。』

『少年飛行兵の教官、藤井一中尉のことが忘れられません。教え子たちが特攻隊として 死んでいく。しかし、教官の自分は安全な場所にいる。「日本が大変なときに、オレは教 えるだけでほんとうにいいのか」藤井中尉の自問自答が始まるのです。特攻に飛び立つ少 年兵と違い、教官の藤井中尉には、妻も子どももいました。自ら特攻志願をすれば、妻と 子どもとは永遠のサヨナラです。妻は特攻に行くのは大反対で、夫の志願を来る日も来る 日も懸命に思いとどまらせようとしました。藤井中尉は悩んだ末、選んだ道は……教え子 に対して、「お前たちだけを死なせない」。そう、命を投げ出す特攻の道でした。しかし、 面倒を見なければいけない家族が多い将校は、特攻には採用されないのが原則。志願は却 下されました。それでも藤井中尉の決意は変わらず、嘆願書を再提出するのです。夫の固 い決意を知った妻の福子さん(当時24歳)は、「私たちがいたのでは後顧の憂いになり、 思う存分の活躍ができないでしょうから、一足先に逝って待っています」という遺書を残 し、3歳間近の長女・一子ちゃんと、生後4ヵ月の次女・千恵子ちゃんに晴れ着を着せて、 厳寒の荒川に身を投げたのです。妻子の死を知り、藤井中尉(当時29歳)は、今度は指を 切って、血ぞめの嘆願書を提出。ついに特攻志願が受理されるのです。藤井中尉の亡き我 が子への遺書が残っています。

12月になり冷たい風が吹き荒れる日、荒川の河原の露と消えた命。母とともに血の燃え る父の意志にそって一足先に父に殉じた、哀れにも悲しい、しかも笑っているように喜ん で母と共に消え去った幼い命がいとうしい。父も近くおまえたちの後を追って逝けること だろう。必ず今度は父の暖かい胸で抱っこしてねんねしようね。それまで泣かずに待って いてね。千恵子ちゃんが泣いたらよくお守りしなさい。ではしばらく、さよなら。 戦後、空母で銃撃を担当していたアメリカ兵の方が(中略)次のように証言したそうで す。次々と、アメリカの飛行機を爆撃していく日本の飛行機があった。「これはまずい」 と、そのアメリカ兵は必死の攻防の末、なんとかその飛行機を撃ち落としました。しかし、 飛行機は墜落する水面すれすれの状態で急旋回して、アメリカの空母目がけて横から攻撃 してきたというのです。「何という執念」と、そのアメリカ兵の記憶に残っていたのだと か。その飛行機に乗っていたのは2人組だったそう。その日、2人組で出撃したものを調べ てみると、それは……藤井中尉でした。』(ひすいこたろう著「あした死ぬかもよ?」より引用)

 

藤井中尉は特攻に行かなくてもいい地位にいたのに、日本の未来を案じ、苦悩の末に決 意したのは特攻でした。あれから74年が経ち、今の日本は未来に希望が持てないという理由で多くの若者が自殺をする世の中です。また、親が子を虐待し、子が親に暴力を振る う、自分さえ良ければ良いと、年寄りをターゲットにしたオレオレ詐欺が横行し、年寄り から金銭をだまし取る。藤井中尉が今の日本の現状を見たら、きっと、自らの命を犠牲に してまで守りたかった日本の未来とはかけ離れていることを残念に思うことでしょう。そ して、自分の命を無駄にしないでほしい、この世の中を変えねばならない、そんなことを 思うに違いありません。平和な今の時代を生きるからこそ、過去の日本人の生き方やあり 方を忘れてはならないと思います。何のために、自分自身の限りある命を使うのか、を考 えさせられました。そして、人は想いを繋ぐことができると信じたいと強く思いました。

 

最近、「利他の精神」について学んでいますが、まさに特攻とは救国の「利他の精神」 だと思います。「自分以外のために」を真ん中において判断をすると、少し前なら簡単に のっていた儲け話も乗らなかったり、社員との価値観の違いも面倒に思わず社員の価値観 に寄り添い対応できたり、簡単そうで意外と難しいと感じています。人生の目的を考えた 時、一つは心を高め、魂を磨くこと。もう一つは人のため、世の中のために尽くすこと、 だと思います。起業から30年、私は富を手に入れることばかりに執着し、自らの欲得を満 たすために奔走していたように思います。しかし、生まれた時より多少でも魂が美しくなっ たか、わずかなりとも人間性が高まったか、などが大切なことだと思える人間になれるよ うに自己改革の真っ最中です。しかし、自らの欲得を抑え、優しい思いやりの心をもって、 自分以外のために尽くす。これらの実践は本当に難しいと感じている今日この頃です。 「すべては心に始まり心に終わる」

 

参考文献 ひすいこうたろう著『あした死ぬかもよ?』ディスカヴァー・トゥエンティワン, 2012年

2019/10/01