復活・羽生結弦

 
平昌オリンピックを観戦し、感動すると同時にスポーツの力に改めて驚かされました。今回のオリンピックは、開催前から多くの楽しみがありました。フィギュアスケート復活するか羽生結弦、男子ジャンプのレジェンド葛西紀明、女子ジャンプ今度こそ高梨紗羅、女子スピードスケート小平奈緒と高木美保など、ドキドキとワクワクの連続でした。その中から、私が感動した「復活・羽生結弦」と、次号で「小平奈緒とイ・サンファ 最高のライバル」について書かせていただきます。

 

 
羽生選手は2017年11月NHK杯前日の公式練習にて右足首を怪我し、3ヶ月後に控えた平昌オリンピックへの出場が危ぶまれました。羽生選手の復帰舞台は、平昌オリンピックぶっつけ本番のショートプログラムでした。「果たして本当に跳べるのか?」日本中のファンはそんなことを考えていたに違いありません。しかし、そんな周囲の不安をはねのけて王者は華麗に、そして完璧に氷上を舞ってみせました。「これでどうだ」と言わんばかりの鬼気迫る、今までに見せたことのない表情でフィニッシュしました。その後、リンクは割れんばかりの拍手と歓声、多くのファンから花束やくまのプーさんが投げ入れられました。羽生選手の復活を待ち望んでいたファンの多さを物語っていました。それはオリンピックの舞台ではなく、まるで羽生選手のワンマンショーの舞台のように思えました。オリンピックをワンマンショーに変えた羽生選手の凄さ、偉大さを目の当たりにし、この瞬間、金メダルを確信しました。当たり前のことですが、他選手達は力を発揮することはできず、思った通りの結果となりました。まるで、羽生選手のために用意された平昌オリンピックだったように思います。

 

 
ソチで金メダルを取ってからの羽生選手は、決して順風満帆ではなく、怪我や風邪と戦う4年でした。では、なぜ逆境の中で今回も金メダルに輝くことができたのでしょうか。羽生選手の言葉から紐解いてみました。「怪我で練習できない間、大学で筋肉解剖の論文やトレーニングのプランニングを学べました。」「計画通りきています、頭で半分取ったようなもの。」「世界中からこんなに応援される選手はいない。その限られた一人の選手として皆さんからパワーをもらっている。怪我も風邪も多い、なのに試合で力を発揮できるのは皆さんの応援があってこそ。」「僕は五輪を知っている。大きいことは言うなと言われるかもしれないけれど、僕は元オリンピックチャンピオンなので。」「褒める部分はない、まだ足りない部分ばかり、誰が取ろうが、僕も取ります。」

 

 
2月11日に平昌入りし、12日には本番のリンクにてわずか10数分の初練習。コーチ陣と握手、手応えをつかんだ様子。13日40分間の練習では美しい跳躍をアピール、14日、15日も軽く練習、16日ショートプログラム本番。このようなスケジュールで本番を迎えるわけですが、私が感じたことは、怪我で滑走練習できなかった日々を学びによってプラスに変えた。練習ができないのでオリンピック本番からの逆算でリスケジュールできた。滑走練習をできなかった分リンク外でのイメージトレーニングや筋トレなどを充実させた。その場、その時に、ただひたすらやれることをやってきた自信の裏返しでしょうか、12日の10数分の練習でやれると確信できた。などの理由で羽生選手が言うように怪我をしたからこそ連覇ができた、というのはうなずける話かもしれません。

 

 
そして忘れてはならないのは、羽生選手の発言の中心には、いつもファンへの気遣いや心遣いが感じられます。「ありがとうございます」「感謝します」など、いつもこのような言葉が前か後ろについています。4月23日、仙台にて10万人を集めたパレードで魅せた羽生選手のファンサービスの高さ、それに答えるファンの応援力を観て、一番の勝利要因は感謝する力のように感じました。

 

 
過去に、経営者数人で「どういう人材を引き上げたいか?」という話をしたことがあります。いくつか出た答えの中で、皆に共通していたのは「いつも自然に感謝できる人」でした。感謝できる人は上司、部下、取引先、お客様、など周りから好かれます。ちょっとした親切を忘れず、折に触れ感謝できたら、きっと周りももっと応援してあげたいという気持ちになるはずです。逆に感謝できない人は周りの親切や気配りが見えません。もしくは、すぐに忘れてしまいます。そうやって、感謝できる人、恩を忘れない人の評価は上がります。一流経営者は「受けた恩を忘れないというだけで、ある程度成功できる」と言います。羽生選手はフィギュアをやっていく過程で、多くの人の力を借りたことを忘れず、感謝の心を持ち続けている、それこそが羽生選手の強さの秘訣かもしれません。「ありがとう」を日常生活に増やすことができれば、人生に跳ね返ってくるかもしれませんね。感謝は高潔な魂の証。

 

 

 

2018/06/01