Column 社長コラム
神の子メッシ
平成の時代から続く慢性的な不況に追い打ちをかけるようにやってきたコロナ・・・。国民全体が「我慢」を強いられ、やり場のない「不安」を抱えてきました。そうした日々から解放され、感動をもたらす不思議な力がスポーツにはあると感じています。私のそれは、睡眠不足と多くの感動を与えてくれた、昨年のFIFAワールドカップ2 0 2 2 でした。ドイツ、スペイン相手に逆転勝ちをしてグループリーグ首位通過した日本の活躍に、日本サッカーと世界との差は僅差だと感じました。
日本の躍進も良かったのですが、もっと感動したのが「神の子メッシ」がキャプテンとして率いるアルゼンチンチームの優勝です。メッシはその圧倒的な技術は衰えることなく、チームを勝利に導いていきました。ただ、私は今大会のメッシに、以前とは異なる印象を受けました。
以前のメッシは、独力でスーパーゴールを決めることができる圧倒的な技術に加て、その瞬発力で相手を破壊してきたプレイヤーでした。
しかしながら、加齢には抗えず、最近では瞬発力や加速力などの身体能力に陰りが見えはじめたように感じます。その代わりに、周りの選手を活かし、一緒に得点をあげ、守備をするプレースタイルに変わり、それが良かったのかもしれません。攻撃だけでは無く、守備にあんなに走るメッシを見たことがなく、それだけで熱いものがこみ上げてきました。
幾多の試合の中でも一番大きな感動を与えてくれたのは、決勝戦アルゼンチンVSフランスです。前半21分ディ・マリアが倒されてPKを獲得。メッシが冷静にPKを決めました。先制で波に乗ったアルゼンチンはメッシを起点としたカウンターから、ツータッチでディ・マリアがゴール、2点目をあげます。前半戦を終え2対0、アルゼンチンはフランスを相手にゲームを支配します。ゲームが動くのは、後半35分からでした。フランスはPKを獲得すると、エムバぺが決めて、2対1。その1分後にエムバペの追加点をあげて2対2。一気に形勢はフランスへ傾きますが、GKのスーパーセーブでしのぎ切り、勝負は延長戦へ。ここでもメッシが魅せます。延長戦後半3分に味方のシュートのこぼれ球を右足で押し込む形でゴール。
この得点で勝ち越したアルゼンチンに、またもや、エムバペが立ちはだかります。エムベパのシュートがアルゼンチン選手の肘に当たったとしてPKを獲得。エムバペが決めて、試合は3対3で終了。その後のPK戦を制しアルゼンチンが勝利します。突き放しても追いつかれる。それも一度ならず、二度までも。観る者すべての魂を揺さぶるファイナル。掛け値なしの名勝負を制したのは、執念でフランスを上回ったアルゼンチンでした。アルゼンチン3度目の世界制覇。
「神の子メッシ」は1987年生まれ、35才、アルゼンチン生まれ。身長170cm、ドリブル、パス、シュートなどのオフェンス能力がずば抜けて高く、世界中のどんなディフェンダーも無力化させます。アルゼンチン代表、バルセロナで主に活躍しました。4才の頃サッカーを始め、8 才の頃、地元ユースチームに所属し、6年間で500ゴール。当時から天才の片鱗を見せつけます。しかし、メッシは10才の頃、成長ホルモンを投与しないと正常に発育できない病気であることがわかり、家族は治療費の捻出に苦しめられました。
その後、リーベル・プレートの入団試験を受けるも不合格になり治療費も相まってメッシのサッカー人生は絶たれたかに思われました。そんな時に、FCバルセロナと繋がりの深い、ホセ・マリア・ミンゲージャと出会います。
この出会いがメッシの人生を大きく変えていくことになります。
今回のコラムを執筆するにあたり、メッシのことをあれこれ調べていると、
メッシがすべてのアルゼンチン国民からどれだけ慕われているかがわかりました。準決勝クロアチア戦3対0で勝利した後、インタビュアーのソフィアさんが、この試合で最高の活躍をしたメッシに投げかけた言葉で締めくくらせていただきます。
「これからワールド杯の決勝がやってきますが、一つだけ言わせて欲しいのです。あなたは結果というものを超えたところで、アルゼンチン国民の一人ひとりの心に入り込みました。誰もあなたを忘れることはできません。本当なんです」「あなたのユニフォームを持っていない子供なんていません。そのユニフォームがオリジナルであれ、偽物であれ、手作りであれ、想像のものであれ・・・。あなたは皆の人生の中に刻まれた存在です。私にとってはその事実の方がワールド杯優勝よりも大切なんです」「あなたはこんなに多くの人々に、こんなに大きな幸せを感じさせてくれました。感謝しています。このことを心に留めておいてくれたら嬉しいです。あなたはもうすでにワールド杯優勝よりも大切なものを私たちに与えてくれたからです。キャプテン、ありがとうございます」
2023/03/01