Column / 社長コラム 社長コラム

2017.10.01

運を引き寄せる Vol . 3

人生(経営)には上り坂、下り坂、まさかの坂があると言われていますが、私の場合もご多分にもれず、何度かの試練がありました。今だから言えることかもしれませんが、試練こそが、運を引き寄せる最大のチャンスだと思えてなりません。これまで大きな試練が3つありました。1つは前号に書いた起業初期の頃の出来事。2つ目は1995年に起こった「阪神淡路大震災」と、同じ年の「置き薬業界大手の牛乳宅配事業への参入」でした。

起業から6年、神戸を拠点に3,200軒のお客様がいらっしゃいました。それが震災により一瞬にしてゼロとなりました。突然全てがゼロになると人間はパニックに陥ります。考えても悩んでも結論が出るわけも無く、思考が停止し無気力の状態になっていました。ボーっと車を走らせ、神戸の町並みを見ていると、壊れたスーパーマーケット・酒屋・喫茶店などが目に入ってきました。その中に同業者である牛乳屋の半分崩れている店舗が目に飛び込んできました。その時、神様の声が聞こえた気がしました「今がチャンス!」震災被害に遭い、全てがゼロになったのはみんな同じ。その同じ条件の中で誰が一番先に前を向くかが明暗を分ける。自宅待機させていた社員に「今がチャンス、前を向いてやれることをやろう」と大号令をかけました。心が前を向くと力が湧き、運気が上がったのか、明治から「救援物資の牛乳を避難所へ届けて欲しい」と依頼されました。その数1日40,000本。今まで配達していた10倍以上の量でした。人とトラックを方々からかき集め、壊れた神戸の街の体育館・公民館などに牛乳を届けました。約3ヶ月必死で配達し、救援物資の仕事が終わる頃、今まで手にしたことの無い大金を手にしました。その大金で震災被害の少ないエリアに出店し、全力で営業活動を行い、大金の全てを使い果たしましたが、その年の12月には元あった3,000軒の店舗ができあがりました。明治は被災した多くの牛乳屋がある中、なぜ私に救援物資の牛乳配達の仕事を依頼してくれたのでしょうか。振り返って考えてみると「ピンチをチャンスと受け止めた心」「誰よりも早く前を向く決断」が良かったように思えます。しかし、何よりも日頃から一生懸命に働いている姿があったからこそ、この仕事はデミックにと思ってもらえたように感じます。

さて、もう一つの試練は、置き薬業界大手のN社の牛乳宅配業界への参入でした。N社は震災から4ヶ月過ぎた頃に西宮市から営業を始め、瞬く間に全国に店舗を広げていきました。飛び込み営業のプロの仕事ぶりは「凄まじい」の一言でした。震災年度はエリアも違い営業のぶつかり合いもありませんでしたが、翌年あたりから徐々にぶつかり、コテンパンにやられた辛い記憶があります。しかし今思うと、まだまだ未熟で、経験も少なかった私が、戦力の乏しいチームを率い、戦力豊富なチームと戦うこと、この戦いは一見「恵まれない戦い(人生)」かもしれません。でも実は逆で、持たざるものだからこそ考え、工夫し、努力を重ねること、それは、不運なことではなく非常に運が良いことだと思います。戦力に恵まれて何も考えなくても勝てる人には必要のない努力。それは、恵まれている人には決して身につかない力をつけることができます。才能に恵まれていないおかげで、結果的に得られるもの。この努力のプロセスこそが運を引き寄せる最大の要因だと思います。
次号は震災から数年後に起こる、人生で一番の試練と、この試練のおかげで今の礎を築くことができた話を書かせていただきます。

2017/10/01