Column / 社長コラム 社長コラム

2017.06.01

神様と呼ばれた男

「絶対負けられないゴルフ」と冠し、元阪神タイガース・関本賢太郎氏(セッキー)と毎月ゴルフを楽しんでいます。セッキーは2015年度限りで現役を引退しました。その頃、阪神タイガース・矢野燿大コーチを介して付き合いが始まりました。当時のセッキーのゴルフの腕前はスコア100を切るのがやっと。それが、たった1年でメキメキ上達し、最近では80代前半で回るぐらいまで腕を上げました。元プロ野球選手という身体的なポテンシャルの高さはもちろんあると思いますが、毎月一緒に回っていると随所にアスリートとしての成長理論、それを裏付ける考え方に感心させられます。また、プロで生き抜くための本音の話は経営と相通ずることも多々ありました。

セッキーはプロ野球選手時代を振り返り、自己否定します。「高校時代はどんなピッチャーの球も打てた。それがプロに入ると、自分と同じかそれ以上のポテンシャルの高い選手がウヨウヨいた。正直打てるようになるとは思えなかった」と。ではどうして、阪神タイガースで19年という長きにわたりプレーできたのか?「大事なことは考えることと、考えたことを実践し試行錯誤すること。切れのある150キロ以上の直球はまず打てない。ならば、このピッチャーのどんな球なら打てるのか。130キロのスライダーなら打てる。打てる球を絞ったら相手ピッチャーのビデオ録画を観ながら研究した。時には練習より多くの時間を研究に時間を割いた。どういう時にこの球はくるのか。癖を見つけ、配球を読む。打てない球は振らず、山を張り、ひたすら打てる球を待つ。考えて、考えて打てる確率を上げていった。その繰り返しで19年が過ぎた。プロで長くやれる人は考えて努力できる人。高い身体能力だけでやっている人は、年齢とともに身体能力が落ちてきても若い時のイメージでスイングしまう。考えて努力しない人は短命。」そういえばゴルフのプレー中もいつもあれこれ考えています。プロ野球時代にそういう訓練をしているから、成長スピードが速いのだと思います。

代打の神様と呼ばれていたセッキーは実はビビリだと思います。「代打として名前をコールされると、毎回恐怖心しかなくて、できれば行きたくないとずっと思っていた。雰囲気に呑まれぬように、ハッタリかましてお客さんを巻き込んで球場を味方にした。そもそも打てる気がしないのに無理やりマインドを固め、覚悟を決めて自分の狙い球に集中する。緊迫の場面で役に立つのは、自ら考え導き出したものの中にある『小さな記憶』。気づけばそれは大きな力となり、その力は球場にいるファンに感動を与えることができた。出番があるかないか、わからない状況でも準備を怠らない、それがプロ。」ここぞという時のパターも緊張感はありません。「4万人の大歓声の中、バッターボックスに向かう時の緊張に比べたら大したことはない」と言います。でも、よく外します(笑)。

セッキーと話をしていて思うことは、野球では投げる、打つ、走る、といった技術以外に大事なことがある。それは「感じる力・考える力・行動力」。感じる力が備わって人は考えるようになり、考える力が生まれて、はじめて行動に移すことができます。セッキーは、ひょっとしたら頭が良いのかもしれません。やはり、最後は「頭」なのかな。考えなければ何も生まれないし「大事」を手にすることはできません。世の中の指導者や経営者の多くは「大局を見よ」「木を見ず森を見よ」と言います。組織をまとめ上げるトップたるもの小さなことを気にし過ぎてはいけないし、組織全体を見渡して明確な方向性や将来のビジョンを示さなければならないと思います。ただそれでも、対極にある「小事が大事を生む」という発想は野球に限らず人生においても、常に持ち続けなければいけないと思います。失敗にこそ成長のヒントがある。冷めていたゴルフにも奮起するきっかけになりました。素晴らしい出会いに感謝!

2017/06/01