Column 社長コラム
あした死ぬかもよ? ~命の使い方~
2年程前、あまり悩むことのない私が、珍しくこれからの人生(生き方)について悩んでいまし た。その頃は数多くの事業を手掛け、忙しい日々を送っていました。しかし、忙しい割には成果 は出ていませんでした。そんな中、仲良しの経営者がライフスタイルを仕事中心から遊び中心に シフトし、人生を謳歌する選択をしました。それがきっかけとなり、自分の人生(生き方)を見 つめ直す機会となりました。そして、これからどう生きるかを決定する上で、私に強く影響を与 えたのは、一人の男と一冊の本でした。
一人の男とはアメリカ大統領ドナルド・トランプ。資産1兆円の大富豪。熱狂的な支持者もいま すが、罵られるぐらいに嫌われている不支持者が半数。私は人から嫌われ罵られるような生き方 をしてこなかったので、多くの人に嫌われる生き方は理解できません。しかし、自分の信念に基 づき狂犬のように吠え、嫌われようが自分の信念を貫く生き方。「みんなに支持されなくていい んだ」と、トランプの生き方に少し憧れが芽生えました。トランプの評価は後世にならないとわ かりませんが、世界の指導者である習近平、プーチン、金正恩などと互角以上に渡り合える人は、 そうはいません。そして、こんなにも多くの人から非難されている男が1兆円の資産を作ることが できるという事実にも勇気をもらいました。トランプのように目標や志を高く掲げ、自分の意志 を貫いて生きる、これからの人生の生き方改革の参考となりました。
一冊の本とは「あした死ぬかもよ?(ひすいこたろう著)」という本でした。この本には『ア メリカ人90歳以上の老人に質問「90年の人生を振り返り唯一後悔していることはなんですか?」 90%の人が同じ答えでした。「もっと冒険しておけばよかった」あなたはやりたいことをやる人 生とやりたいことをやらない人生、どちらを選びますか?やりたいことを選びますよね。しかし、 このままの生き方を続けると人生最後の日、90%の確率で後悔することになりそうです』と書か れていました。自分の人生を振り返り後悔は微塵もありませんが、全力で力を出し切ったかと問 われると、そこまではできてないというのが本音のところです。起業から30年の間で、どの時期 に全力で生きていたかを振り返ると、起業間も無くの数年間だったように思います。起業の動機 は金を稼ぎたい、毎日美味しいものを食べたい、着たい洋服を買いたい、乗りたい車に乗りたい、 大きな家に住みたい、などすべて自分の欲望のためでした。しかし、自分の欲望を満たすことを 目的に生きていると、周りの人からは理解を得られなかったり、人に騙されたりと、上手くいか ないことも多かったように思います。そして、よくよく考えてみると、これらの欲望はあの世に持っ ていけません。この世で財産を失うことは本当の不幸ではなくて、この世で最大の不幸は死ぬ前 に後悔することだと気づきました。後悔を避ける方法はたった一つ、自分の死を想像してみる。 死を見つめると、自分の「本心」に気づくことができます。どういう訳か人は「自分だけ死なな い」と思っていて「死はいつも他人ばかり」だと。残念ながら私たちが死に至る確率は100%です。 かつての侍は、あれだけ潔く情熱的に生きられたのは「自分はいつか死ぬ身である」という事実 から目をそらさずに「この命を何に使おうか」と日々心を練っていたからだと思います。「死は人 生を全力で生きるスイッチ」なんですね。
現在でも、目標や志を高く持ち、いつ死んでも後悔しない生き方を考えています。どのような生 き方をするべきか、どんな仕事を選択すればよいか、まだ結論は出ていませんが、少し考えが定 まったことは、私の人生の大きな目的として「一人より十人、十人より百人、百人より千人、千 人より万人、どれだけたくさんの人に必要とされるか」という生き方をすると定めました。自分 のためではなく、自分以外のためになる生き方をする。あまり大層にならず、自分以外のために何 ができるのかを、人生の目的として生き方を考えてみると、仕事関連以外の人と関わる時間が増え たように思いますし、仕事でもそれまでの戦略とは全く違う戦略が頭に思い浮かぶようになりま した。自分と仲間がプライドを賭け取り組んだ仕事が業界にどんな価値を生み出し、自分自身その仕事にどれだけ価値を見出すことができるのか、そんなことを考えていると心が躍ります。上手 くいく、いかないは自分以外の何かにどれだけ役に立っているのか、そして、そこに本気の価値を 感じているかどうかなんだと。最近よく思うことですが、自分だけが喜び、自分だけで利益を完 結し、自分がどれだけ稼ぐか、は何か違和感を感じます。「自分がどれだけ得をするか」と「自 分以外のために価値を生み出し、結果として自分がどれだけ得をするか」は似ているようで全然 違います。本当に世の中の価値を生み出そうとすると「急がば回れ」というような選択肢を持ち、 会社の趣旨や思いを認知されないと、世間から支持されないように思います。まだ確かな人生の 目標までは完成していませんが、周りにいる仲間と、自分の定めた業界や地域を変え、結果的に この日本を変えられるような生き方を送ることができれば本望です。
参考文献 ひすいこうたろう著『あした死ぬかもよ?』ディスカヴァー・トゥエンティワン, 2012年
2019/08/01