Column / 社長コラム 社長コラム

2020.01.01

キアヌ・リーブス

1989 年、神戸にて牛乳宅配店を始めました。牛乳宅配をやりたいというより、何でも届けられる宅配というビジネスモデルに魅力を感じたことが大きな理由の1つだったように 思います。牛乳の配達を始めてみて、このビジネスモデルの大いなる価値に気付きました。 それは、配達中に時折お会いするお客様との会話や集金時の会話などから、大切なお客様の 個人情報が簡単に積み上がっていくことでした。家族構成や年齢、趣味嗜好に至るまで。こ のビジネスモデルの最大の強みは「お客様ニーズの先取り」だと実感しました。牛乳屋とい う枠組みを超えて、顧客ニーズを先取りし、乳製品以外の商品を届けられないかを試行錯誤 しましたが、乳製品を上回る商品を見つけることができなかったというのが、実情です。起 業から30年が経ち、デジタル革命の先頭を走るアマゾンや楽天といったネット通販は私の 思惑を大きく超えて、宅配ビジネスを変えてしまいました。ネットで注文して、自宅にあら ゆるモノが届けられる時代となりました。もちろん乳製品も注文すれば届きます。ネット通 販は牛乳屋の存在価値を無くしてしまうのではと危機感を持ちましたが、今のところ大き な変化はありません。その理由は牛乳宅配のお客様の大部分がネットをあまり利用しない シニア層だからだと思います。牛乳宅配店の一番大きな目標は、今後益々拡大するシニア層 に対し、必要な商品やサービスを開発することだと思います。これからは乳製品を届けるだ けではなく、シニアのお客様層から信頼されるように努めながら、ちょっとしたお手伝い (草むしり、電球交換など)、本格的なお手伝い(エアコン・換気扇のクリーニング、障子 の張り替えなど)、ライフサポートコンシェルジュ(終活・年金・保険・不動産の相談など) を本格的に取り組んでいきます。そして、「牛乳を届ける会社」から「地域やシニアの役に 立つ会社」へ変化しなければ、生き残れないと考えています。

最近強く感じることがあります。それは、人生の前半と後半では吹く風の向きが変わるの では…。起業の頃(前半)は欲しいモノを得たいというエネルギーやパワーが強ければ強い ほど、それが原動力となり欲しいものを手に入れることができました。これは人生の前半戦 で吹く追い風のようなものだと思います。しかし、この数年、自分の欲望の赴くままに新た な事業を始めても、あまり上手くいきませんでした。その理由を考えてみると「人生の前半 と後半では吹く風向きが変わる」と考えると合点がいきました。人生の後半では自分の欲し いモノを手に入れるために、頑張れば頑張るほど、騙されたり、失敗したりと、向かい風が 吹き苦労の連続でした。「どうしたら喜ばれる存在になれるだろうか」、「今まで得たモノで どうやってみんなの役に立つか」と考えると、向かい風が追い風に変わりました。これが人 生の後半に吹く追い風です。人生の折り返し地点を過ぎたと思ったら、自分の欲しいモノを 求めて動くより、「自分のため」から「自分以外の人のため」の利益になるかを考えてみる と、どんどん追い風が強くなり、仕事でも成果が上がりだしました。人生は不思議ですが、 前半と後半で風向きも違い、色々なことを学ぶように組み立てられているのですね。
状況もビジネスモデルも生き方も、あらゆるモノは時の流れとともに変化します。しかし、 どのような変化が起ころうが、自分の人生をどう生きるかを決めるのは私たち自身です。最近、素敵な生き方をしていると思った方を紹介します。映画・マトリックスシリーズで主役 を務めるキアヌ・リーブス氏です。彼は 100 億相当のハリウッドスターだと言われていま す。しかし、今でも地下鉄に乗り、ボディガードもいません、高級な服も着ていません、ま してや豪邸にも住んでいません。彼の人生は恋人を事故で亡くす、友人を病気で亡くす、妹 は白血病になり、ご自身もうつ病になるなど、数々の不運に見舞われました。しかし、その ような状況の中で彼は言います。「結局はどんな悲惨な状況の中でも素晴らしい人は力強く 生きることができる、あなたの人生で何が起きていようとも、あなたはそれを乗り越えるこ とができます。人生は生きる価値のあるものです。あなたの人生の中で苦労したすべてのこ とのおかげで、今のあなたの存在があります。苦難の時はあなたを強くするだけなので、そ んな時には感謝しましょう」と自分のこと以上に周りにいる人を励ましました。「私たちは 毎日の生活に捉われすぎるあまり、人生の中の美しさに目をやることを忘れてしまってい ます。目があった人に挨拶をしたり、辛そうに見える人に手を差し伸べてみるのもいいかも しれません。誰かを助けるのです」「どうかあなた自身を真剣に考えすぎるのはやめてくだ さい。美味しいものを食べましょう。太陽の下を歩きましょう。海に飛び込みましょう。馬 鹿げたことをやりましょう。優しく生きましょう。人生をその他のことのため使う時間なん てないのですから」

2020/01/01