Column 社長コラム
リーダーシップ
ある会合で校長先生の悩みを聞きました。それは新任の先生の育成法でした。例えばイベントがあるとする。「昔だったら校長が何も言わなくても若手の先生たちから『イベントの練習しようや』と声が上がったものでした。しかし今は、そんな声が上がらない。それどころか下手をすると校長の私が『練習しよう』と声をかけている始末です。それでも動かない『笛吹けど踊らず』とこんな調子です。どうしたらリーダーシップを育成できるのでしょうか?」
私が人生において初めてリーダーシップに触れたのはJCという団体での委員長の行動でした。年度当初、その委員長はチームの一員となった私の会社に挨拶に来られました。それまでの私はJCには気が向いたときに行くという中途半端な活動でした。きっと、行きやすい環境を作ってくれたのだと思います。やむなく欠席したときには必ず翌日、会議議事録のFAXを送っていただきました。そして、FAXには自筆で「次回参加してくださいね」と書かれていました。会議には30分以上前、一番最初に来て、私たちメンバーを元気な挨拶で迎えていただき、会議中に飲むお茶も全員分を買い揃えていました。会議ではそれぞれのメンバー全員に見合った役割を与え、進捗確認と必ずそれに対する評価も忘れませんでした。そんな委員長の気遣いあるリーダーシップに多くのメンバーが出席しました。そして、いつも会議終了後の懇親会にも全メンバーが参加して、楽しくて仕方がなかった記憶があります。そんな委員長との出会いにより、私も「こんな人間になりたい」とJCにのめり込むきっかけとなりました。JCでは多くのリーダーを見てきました。そこで感じたことはリーダーシップには「人を動かす能力」と「人が動きたくなる魅力」の2つがあるということでした。資質と人柄が大事であることは言うまでもありませんが、その中で最強のリーダーシップは「好きだから」だと、私は考えます。人から好かれるのと嫌われるのとでは大違いです。いくら立派なことを言っても嫌われていると、「何を細かいこと言っとるんや」と言われます。逆に、好かれていると理不尽なことを言っても「あの人に言われたら仕方ない」と許されます。「好きだから」という魅力がリーダーシップには大きく関係しているように思います。
マザー・テレサがノーベル平和賞をもらったときの記者会見での席で、一人の記者から質問されました。「世界平和を実現するために、私にできることはなんでしょうか?」すると、マザー・テレサは笑顔で答えました。「今日お家に帰ったら、家族を喜ばせてください」と。この言葉はまさに真理だと思います。リーダーは足もとより遠くを見がちになる。家族やスタッフ、自分の大切な人を見落とし、大きな世界に夢を馳せます。しかし、自分の大切にすべき人一人をも幸せにできずに、世界や日本という大きな集合体を幸せにしようとするのは、どう考えても無理があります。学校なら生徒たちのことを一番に考えている先生。仕事場なら目の前にいるスタッフのことを一番に気遣ってくれている上司。政治の世界なら誰よりも日本の国民のことを愛してくれている政治家。リーダーシップとは目の前の一人に「好きだから」と思われること。遠回りのように見えて、実はこれが一番早道だと思います。急ぐ必要はなし、足元を固めよう。器に応じた仕事が勝手に転がり込んでくるように思います。
2016/04/01