Column 社長コラム
矢野 燿大3・予祝
阪神タイガース・矢野監督は昨年「予祝」をチーム改革に取り入れました。「予祝」とは、先に喜び、先に祝うことで、その現実を引き寄せる、日本人が昔からやっていた夢実現法で す。各地に伝わる「夏祭り」は秋に実る稲が豊作だと決めて、楽しみ、喜ぶことで、豊作を 実現する習慣でした。昨年、矢野監督は笑顔で選手に声をかけ、全身で喜び(矢野ガッツ) を表現し、チーム指揮官こそが夢を叶えるためにワクワク楽しむことが必要だと「予祝」を 実践しました。しかし、結果的には何とか A クラス入りを果たせた苦しいシーズンになりました。
2019 年沖縄キャンプインで矢野監督は予祝を実践、「2019 年阪神タイガース優勝しまし た。ありがとうございます」という挨拶から始まりました。しかし途中、首位巨人に 10 ゲ ーム以上の差をつけられた時は、選手に「優勝した・予祝」と声をかけることに、ためらい を感じたそうです。その時に選手達に観せたのが『宗一郎くん』という文字動画でした。
宗一郎くんは小児がんで 8 歳で光の世界に帰りました。最後の3ヶ月は病院ではなく自 宅で過ごしました。ご両親は元気になって欲しくて、いろんな機械を購入して試したそうで す。でも、今から思えばもっともっと一緒に楽しんであげればよかった。日に日にやせ衰え、 痛みに苦しむ息子を看病することはとても辛かった。居てくれるだけでいい、生きていてく れるだけでありがたい、辛い痛みの中でもできるだけ、私たちに笑顔を見せようとしていた 子でした。「お母さん、ごめんね」「もっと元気だったらお母さん、お父さんも疲れないのに ね」「お母さん、僕もっと生きたいよ」病状が相当悪くなった日、病院に連れて行く車中で・・ あまり意識が定かでない宗一郎はこう言うんです。「信じ合って、助け合って、分かりあっ て生きていくんだよ」「苦しい時や悲しい時ほど、笑うんだよ」「自分を責めることが一番い けないんだよ」などと強い口調で私たちに言うんです。病院での最後の時・・たんが絡んで 声にならない声で・・最後の一声が・・「ありがとう」それまでは全身の痛みで抱くことが できなかったので、最後は力一杯母親に抱かれながら静かに息を引き取りました・・。 「みんなと一緒に学校へいきたいな」「お父さん、お母さんと美味しいラーメン食べたいな」 「お外で遊びたいな」「髪の毛生えてきてほしいな」「元気になりたいな」「早くお父さん、 お母さんを安心させてあげたいな」「まだ死にたくないな」「大人になりたいな」これらは限 られた時間を生きている小児がんの子供たちのしたいこと。いつかどうしても叶えたいと 思っている夢だそうです。僕たちが何気なく過ごす 1 日は、昨日亡くなった誰かが、どうし ても生きたかったかけがえのない一日。過去は英語で past 、未来は英語で future、現在= 今は英語で present・プレゼントと言います。生まれてきたということ、生きているという こと、今神様からの素晴らしい贈り物を抱きしめてみてください。あなたはあなたが思って いる以上に素晴らしい・・・。
動画を観終わった後、矢野監督は「俺たちは子供の頃からの夢だったプロ野球の世界で野 球ができている それだけでも幸せなこと もっともっと野球を楽しもう もっともっと 生きていることを喜ぼう」と。この後、終盤の快進撃が始まりました。
一昔前のプロ野球界では⻭を見せたら殴られる、苦しいから結果が出る、恐怖で選手を動 かす、こういった風潮が当たり前でした。しかし、矢野監督はこの風潮に真っ向から異を唱 え「夢を語り、手本を見せる、選手は尊敬と憧れで一番動く、その場合は選手が勝手に育つ ようになる」そうです。矢野監督に今年のスローガン「itʼs 笑タイム・オレがやる」につい て聞くと「子供達に夢を尋ねると、自分の夢を何個も、子供によっては何十個も言うんです。 スーパーマーケットのレジ打ちのおばちゃん。工事現場で旗振ってるおっちゃん。人から偉 いと思われること、人から立派だと思われることだけが夢ではない。大人の表情を見て夢は 決まる。僕らが疲れた姿を見せることはよくない。大人の表情は子供の夢につながる」「優 勝を何年も続けて、その先に何があるのか。野球界に魅力がもっと必要、ただ勝つだけの試 合を観せてそれでいいんかな。今年のスローガンはただ勝つだけの阪神タイガースではな い。itʼs 笑タイム、一番喜んでやろう、一番楽しんでやろう、楽しんで勝ってやろう、そし て、その先には、子供たちがやる野球を、楽しむ、喜ぶ野球に変えたい、子共たちを笑顔に す る 。」 そ ん な メ ッ セ ー ジ を 込 め た と の こ と で し た 。「 優 勝 は 当 た り 前 。 優 勝 す る に は 1 4 0 試 合のうち 80 勝しなければならない、しかし我々の目標は負ける 60 敗でいかに感動させる かにこだわる」。
人間は1億円の宝くじが 100 万回連続で当たる確率で生まれてくる。生まれてきただけで も奇跡。人は人生を楽しむために生まれてきた。人生はお祭りだ!いつも矢野監督との楽しい会話で活力をもらっているように思います。今年の阪神タイガースは期待大だと思います。
参考資料 宗一郎くんのメッセージ URL:https://youtu.be/dzICgnz8xKs
2020/04/01