Column 社長コラム
経営改革-社長の器編-
若い頃、人の器の大きさについてよく考えることがありました。器の大きさを測るための物差しは人によって違いますが、私なりに考えた『器』とは、どれだけ多くの方に『影響』を及ぼすことができるのか、その『影響を及ぼす範囲』のことが器の大きさであると考えていました。では、多くの方に影響を与えるに具体的には何が必要か?「人望」「信頼」「度量」「貫禄」「威厳」といった人格的要素や「知識」と「理論」さらに「戦略」「戦術」といった経営面での素養にたけている事はもちろんのこと、表現力に優れ、的確な言葉を使えることも重要なポイントだと考えられます。
人間社会は基本的に言葉のやり取りで成り立っているため、コミュニケーションの質の向上や、相手への影響力の強化、スタッフからの信用及び信頼の獲得のためには、どうしても言葉が必要となってきます。
経営者である私に大きな器があれば、多くの社員を引っ張っていくリーダーシップ、社員の心をグリップする求心力、職場での社員の満足度向上、など様々な課題の解決に繋がると確信していますが、今のままでは難しいと感じています。なぜならば、私は様々な事業に携わっているため店舗にいる時間が確保できずに、スタッフとコミュニケーションが取りづらい状況だからです。器を形成するためには、どれだけ現場に時間を割けるかが重要なのです。
そのため、デミックの直面している経営課題(組織改革、業態変換)などの解決に向けて、私自身が先頭に立ち、各地の店舗へ訪問し「店舗改革を行う」と決めました。「現場は宝の山」この言葉通り、経営改善をするための多くのヒントは牛乳宅配店舗にありました。改革の第一歩は、スタッフへの感謝の気持ちを伝えることから始まりました。店舗訪問を行い改めて感じたのはスタッフの凄さ、雨の日も、風の日も、お客様のご自宅まで牛乳を届けてくれているスタッフへ感謝の念に堪えません。全ての改革は、この「感謝」無くして前へ進めないと思いました。次に、スタッフとのコミュニケーション量を増やしました。「趣味は何?」「休日は何してるの?」「奥さんや彼女はどんな人?」から始まり、「仕事のやりがいは?」「仕事の楽しいところと辛いところは?」「未来どうなりたいのか?」など、話を進めていきます。身の回りのことから、人生観まで、色々と話をしていくと、その人の性格や人となりが理解できてきます。もちろん、私自身のことも包み隠さず話します。良いチームを作るには、店舗で働くスタッフのことを知ることが必要不可欠だと思います。
各店舗では約10人〜25人の社員や配達スタッフが働いており、当然、店舗改革は店舗にいる人を中心に進めます。したがって課題解決のためという理由で、店舗にいるスタッフを蔑ろにし、新しいスタッフを迎え入れても上手くいかないように思います。だからこそ、時間をかけて目の前(店舗)にいる人との信頼と信用を築くところから一歩、一歩進めていきます。
スタッフとコミュニケーションを深めると色々な事に気づきます。気づく⇒考える⇒行動する⇒壁にぶつかる、また気づく。このようなサイクルで頭の中がずっと休む間も無く、考え続けています。また、自分自身に「デミックが生き残るためには?」「経営者としての目標は?」「社員をどこへ導くのか?」など自問自答を繰り返しています。ホント考えてばかりで疲弊してしまうこともありますが、『企業は社長の力量以上に伸びないし、社長の器より大きくなる事は無い』これが組織論の原則です。
したがって組織が強くなれるかどうかは社長の力量次第。ならば、社長と呼ばれる人間はどんな時も、自分をレベルアップさせ続ける義務があります。私自身も、より良い組織づくりや人材育成、指導方法などを自分自身に問い続け、本業以外にも多くの経営者との交流を通して、自分を磨いてきたつもりです。社員以上に自分を厳しく律し、「進歩しよう、向上しよう」と戦う姿勢を周囲にも見せる必要があると思います。
社長の器の要素を全て備えている人は皆無に近いです。私がなんとなく長く社長をやれているのは、欠点こそあれ、信用や信頼を得るために創意工夫を重ねて、社員や役員からの助けを借りることができたからだと思います。社長の器を図る様々な要素の中で、肝要なのは、信頼、そして周囲から寄せられる信用だと思います。
2023/08/01